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『労働政治』

久米郁男著『労働政治 戦後政治の中の労働組合』中公新書

小泉一応改革主義が政権をとってからというもの、「抵抗勢力」という言葉が一般語としても広がりほとんど反省もないまま、使われているようです。「抵抗勢力」というのも「レジスタンス」とでも言い換えればかっこよく聞こえもするだろうけれども(笑)。で、抵抗勢力というのは大体、族議員と結びついた官僚、および特殊法人、あるいは労組、などを指しているようです。

利益団体、などが圧力を行使して、既得権を守り抜こうとしている、そういうことを聞くのですが、そんなに単純に考えていいのかな、と思いながら、この本を読んでみました。で、利益団体というのは、既得利益の追求もありますが、一応は専門家の団体なので、それのいくつかが(利益の相反するような)協議すれば、それなりの結論がでてくるのではないか、という考えもある、ということです。審議会、調査会、なども含めて。

問題はたぶん、二つあって、官僚などがすでに用意していた結論にお墨付きを与えるだけのために、審議させている場合があるだろう、もう一つは、利益団体にも強弱があって、経団連などの圧力のほうが強くてそちらが通ってしまう場合、あるいは一般大衆みたいにそれぞれの特定の案件に、特殊利益ではなく、一般利益しかない場合、それを反映する利益団体などは組まれていない可能性が大きいこと、ではないでしょうか。

もちろん、小泉首相はそれを逆手にとって、この利益団体がない一般大衆へのイメージ戦略で、支持率、投票率で稼いで、それの圧力で彼が「抵抗勢力」と呼ぶ連中を押しつぶそう、とするんですね。ところが、それも問題があって、第一に、彼自身がそんな政策通ではないので、彼の改革は結局骨抜きにされる(例えば、今度のゆうせい改革法案もそうですし、特殊法人解決も逆に税金の負担が増して、天下り天国のままでいるという意見もあります)

もう一つは、強引に「抵抗勢力」をつぶして法制を変えても、実体としてそれらのメンバーは残っています。逆にその強引さに反発して、実質として反抗し続け、法的な改革が骨抜きにされる可能性があるのではないか、と思います。時間がかかっても関係各者の意見を刷り合わせたり、調整したりしていったほうが結局はちゃんと改革できる面もあるのではないでしょうか?

ところで、「官」だと投票もできないし、市民の参加は不可能というかもしれませんが、市民団体、環境団体、消費者団体、などを通した参加は不可能ではないでしょう?確かにそういう団体は少ないし、また、長時間労働を強いられている市民が参加できる時間も限られるでしょうけれども。それが上に挙げた問題にまた戻っていくわけですが・・・

といっても、この本は特殊法人全般の話ではなくて、もちろん労組の話です。ただ、第1章などの理論編に利益団体の話もあったので、こんなことも考えました。
by ganpoe | 2005-09-25 14:02 | Books

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