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新自由主義と地域の発展の関係?

前回、小泉政権やブッシュ政権が代表する新自由主義的な政治の方向と、同じ改革派でももっと住民・地域よりの自由協同主義との違いを説明し始めました。もっとちゃんと書かなければいけないのですが、時間もないので他の著者の文から引用してごまかしてしまいます(笑)。

しかし、これを読めば分かるとおり、やっぱ小泉改革って微妙なもので、よく見えてくるのもおかしくないのかも。多国籍企業の経営を有利にして国際競争に勝つ、ということが本当の目的なんじゃないかと思うのですけど、なんか民衆のためにやっているように見える。1930年代の軍国主義と似たようなものです。

中村剛治郎さんの『地域政治経済学』から抜書きです。段落付け足したり、とか読みやすくなるように工夫しました。

「グローバリゼーションの時代のもとで、国家の役割と負担を多国籍企業の利害とかかわる国際関係に重点化し、国内では規制緩和と「地方分権」をすすめて国家の役割と負担を縮小する新自由主義の立場からも、内発的発展の必要が叫ばれるようになっている。」(23ページ)

内発的発展
というのは、それぞれの地域が外の大企業や中央国家のコンビナート計画とかによって左右されるのではなくて、地域のニーズに沿いながら、その持続的な環境保全的な開発を進めていく、というような意味です。つづけます。

 「1970年代半ば以降、画一的大量生産システムは危機に陥り、先進国経済は減速経済の時代に入り、新規工場の立地の多くは国内分散から国際分散の時代に移った。」

たとえば、アジア諸国のように日本より賃金が低い地域などに立地をする、ということです。

「低付加価値生産工場の多い地方圏だけでなく、比較的高付加価値生産工場の多い大都市圏でも、製造業は衰退し、産業空洞化の危機が叫ばれた。産業のリストラクチャリングはホワイトカラー層の人員削減にまで至り、雇用の危機が広がった。」

低付加価値というのは比較的単純な作業・組み立てなどで、高付加価値はハイテク、といわれてるようなものですね。続けて23ページから24ページへ:

「国民経済の成長すなわち繁栄する大都市圏の存在と新規分工場の国内地方立地という旧来の地域政策の前提条件が崩れた。いまや、経済発展の地域的不均等や産業・雇用の地域的分布の是正ではなく、経済発展あるいは産業や雇用の創出が国民経済の課題となった。国家の役割も変化した。」

つまり、大都市はほっとけば高度成長していて、その儲けをどう全国に分け与えるか、というようなのが国土政策だったのですが、バブル崩壊などもあり、大都市などにおいても、経済成長が鈍化して、「分け与える」どころではなくなってしまった、という意味です。

「低成長で財政危機に陥った福祉国家は、「政府の失敗」に対応するために改革を求められ、新自由主義の考え方の影響もあって、社会改良的な地域政策を縮小し、地域が自前で問題を解決する「地方分権」を推進するに至っている。

グローバリゼーションのもとで産業空洞化が進む諸地域で、諸地域の責任として内発的発展を進め、雇用を創出し、経済社会を維持する取組みを強化することが、新自由主義的国家の立場から望まれている。」

これが所謂「東京優先、地方切り捨て」ということでしょうか。悪く言えば。

「地域経済の危機に直面し、しかも、企業誘致など外来型地域開発や中央政府の地域政策に依存できない地方自治体は、権限や財源などの制約を広域合併による行財政の合理化で乗り越えながら、内発的な地域経済政策に取り組もうとしている。」

平成の大合併ですね。

「社会的意識の高い市民層もまた、公共依存を改め、NPO(非営利的市民組織)を組織して、福祉給食サービスや安全安心素材によるベーカリーや食品店、衣料品店など多様なコミュニティ・ビジネスを展開して、市民社会を自らの手で守り発展させる内発的な運動を強めている。」

これが地域のニーズに照らした協同主義的なというものです。地域の主に「生活」のニーズを高める、いや単なる生活圏から「コミュニティ」というような地域関係を再生させよう、というような動きです。

これ自体としては評価できるように見えるのですが、別の意味では、おかげさまで安心して地方を切り捨てられます。中央国家と大企業は東京の発展と国際競争における勝負に専念します、という意味でもある、という状況になっているのだ、という指摘があります。

 「地域からの内発的な取組みは、それ自体では、現実には、国家が社会国家を縮小し、社会的弱者を切り捨てながら、軍事と経済、両方の国際国家へと変貌していく、多国籍企業の時代の新自由主義的国家再編をサポートする役割を果たす可能性を内包している。」

中国や朝鮮などの隣国にライバル意識を燃やしたり、国際的な軍事的活動を強めようとしたり、また国連の常任理事会を狙ったりするような、そういう動きです。

「大企業が地方に工場進出をしたり、中央政府が大規模公共事業を地方に展開する時代には、地域に根ざした住民主体の内発的発展の理念は、それ自体で、独自の対抗的意義を示しえたが、地方への工場進出も国の公共事業や公共サービスも縮小し、国家や財界が、国家の地域政策を縮小し、諸地域や市民の内発的発展を求めるいまの時代には、古い中央集権的福祉国家を批判するだけでなく、新自由主義的国家をも超える新しい第3の国家像を展望しうるような内発的発展論と市民運動が求められる。」

古い中央集権的福祉国家、いわば、自民党の郵政改革反対派みたいな人たち、それから新自由主義的国家、これを越えるようなものは何か、ということで、また、章を改めて・・・・(この下に続く)
by ganpoe | 2005-09-03 11:49 | Social or Economic

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