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『ザ・フェミニズム』

上野千鶴子・小倉千加子 対談『ザ・フェミニズム』ちくま文庫

 今度文庫版になったこの本を読んだ。おすすめ。

 イヤー、笑えた。楽しい本ですよ。
 フェミニズムに関してさまざまな理論や現実問題が述べられてあって便利です。理論的なことは大分前に僕もいくつか(軽く)読んだことがあったのですが、ここではそれといって新しい考察は見えないものの、いいものを選んでいると思いました。簡単には次の3つぐらいに分けられるみたいですね。

 1)女権拡大論。これはつまり民主主義的な、そして職業的な差別をなくして男女同権に持っていこう、というような議論。いわば国民国家、資本主義という近代の大まかな枠組みは変えることなく、その中での権利の拡大を目指す、というもの。

 2)脱近代的フェミニズム。さらに「女性性」という近代が作り上げた幻想を超えて、それぞれ個人の自由を追求していくことによって、「近代」自体を作り変えてしまおうというような考え。

 3)私的利益追求主義。以上のような何かに限定するのではなく、それぞれ個人の利益を追求する上で、例えば専業主婦がよければそれを選択すればいいし、例えば男権社会で有利に生きるために「女性的魅力」を生かして出世しよう、というならそうすればいいし、あるいは性的快楽だって好きにすればいいんだし、というようなもの。

 ・・・って分け方でいいのかな?2)ももちろん、自由を求めるんだけど、「結婚」とか「専業主婦」みたいなものは批判する、ってとこがあると思う。ここで上野さん、小倉さんはここに含めちゃってるんだけど、これを追及するとどうしても近代の枠組み「資本主義・国民国家」の批判に行き着いていくんですね。例えば結婚なんて何でいちいちお国に知らせなければならないのか、とか。

 現実問題としても、少子化にせよ、パート労働化にせよ、政治経済の動きと離しては考えられないんだし、(小倉千加子の階級別に分けた晩婚化分析、非常に面白い)「フェミニスト」の視点からの資本主義・国民国家の批判、それの漸進的な(少しずつしかし確実な)改革なんてのがどんどんでてきたら面白いと思いました。

 しかし、「こんな過激なこと言っていいのかしら」って何度も言ってるけど、これ過激なのかな?ふつうじゃん。こんなに日本の論壇ってとこは保守的なんでしょうか?

 たくさん抜書きしたいところがあるのですが(世代論とか、代議制への不信とか、介護問題とか、保育、女女格差、パート労働、新自由主義と労働形態の変化・格差・・・)ここでは一番最後のなんとも感動的な「愛」についてのお話を書きたいと思います。

 「小倉 ・・・目に見えないところで人々が互いに愛し合うことは、権力の最も恐れるところです。・・・・私は人を、周りの人たちを喜ばせ続けたい。何でか言うたら、世界が色彩にあふれて見えるから。愛が飛び交う濃密な関係をあっちこっちでみんなが実践すればいいと思う。もう、それは始まってるような気がするんよ。うん。現実に存在してますよ、あっちこっちで。ムンムンするぐらい。
 上野 本当にそうですね。エロスとは本来、生を肯定する力のことですから。」


 
by ganpoe | 2005-09-15 13:07 | Books

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