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資本主義を経済的に変える 二つの方法(は無理か?)

2004年7月14日


 資本主義を倫理的に変えようとした人たちは、経済的には、二つのことを主目標としました。

 一つは、利潤を平等に労働者の間に分配すること。市場活動で得た利潤を資本家、つまり工場や会社の持ち主が独占するのはおかしい。労働者には決まった給料だけ払って、たくさん出た利潤は資本家が持っていく、というのではなくて、利潤を平等に労働者の間で、均等に分配しよう、と。これが、例えば労働組合の賃上げ闘争、あるいはボーナス、ストックオプション、などの企業の業績を反映した賞与、などを求めた運動につながりました。
 
 もちろん、企業も労働者のモチベーションをあげるために、そういうのに可能な限り合意したりします。でも、企業、資本家のほうでも理由はあるのです。市場の活動はリスクがある。もしかして赤字になるかもしれない。そのリスクをしょっているからこそ、利潤を手にするのだ。その利潤だって、次の投資のために使うのであって、企業全体の繁栄に貢献するから、と思って内部留保しておくのだ、と。

 でも、赤字になったら、真っ先にリストラされるのは、普通の労働者、勤め人ですから、ちょっとこの理由はおかしいですね。内部留保しておく、というのも、例えば、従業員個人に分配して、その中から、それぞれが企業に対して持つ信頼度によって、例えば社内預金などを通して、会社の必要な資金に出す、という方法だってあるのだから、やはりどこか納得がいかない。

 そんなわけで、こういう資本主義企業の仕組みがどこかおかしいと思った人たちが作ったのが、一般に協同組合、といわれている形ですね。これもいろんな形態があるので、例えば、形としては株式会社とほとんど変わらないけど、勤務しているみんなが出資している、と言うケースもあります。

 ただ、そんな協同組合型のものを作っても、市場で競争しなければならないのは同じですから、結局利潤競争に巻き込まれるだけじゃないか、という批判もある。資本家と労働者、という具合に対立で考えるのではなくて、資金提供者、経営のプロ、現場で活躍する人、というように共同で仕事をしていくように変えるのが筋ではないか、という説もある。

 さて、最初に戻って資本主義を倫理的に変えるためのもう一つの経済的目標は、生産と消費の均衡化。消費者のニーズにぴたりと合わせた生産をする仕組み。こういうものを作ろう、というものでした。

 確かに、消費者のニーズとぴったり合った物を、ぴったり合うだけの量作るなら、無駄も無く、何より、どれだけ売れるか分かっているから、値段も、それぞれが多からず、少なからず、の収入になるように、決めることができる。それぞれがコストや製造方法などを公開すれば、まんべんなくお金がいきわたって、これはいい考えのように思える。

 でも。。。消費者のニーズがどんなもので、どのくらいあるか、というのは前もって分からないものなんだ。

 だって、そうですよね。今、カツどんが食いたい、新しいTシャツが欲しい、と思ったところで、今、欲しいものが今、手に入るためには、その前に誰かが作って用意してくれていなければならない。今食いたい、といって、できるのは半年後です、なんていわれたら、飢えて死んでしまう。半年後にTシャツができたところで、もう冬だから要らない、セーターが欲しい、となってしまう。そうすると、例えば、夏に冬のセーター需要を予測して、あらかじめ作っておく、という形になるしか、手が無い。

 そうすると例えば、予想が外れて、セーターを作りすぎて余ってしまう。売れなくなってしまって、赤字を抱えて倒産してしまう、ということも起きてしまうでしょうし、逆にたくさん需要があったので、すかさず値段を上げる、とか、あるいは、必要な人たち全員にセーターが行き渡らない、ということになってしまう。

 でもあきらめたくない運動家は、この生産と消費の均衡化のために、きちんとした計画があればいいんだ、と考えた。科学的に情報を収集して分析する、頭脳を集めてきちんと計画する。

 そうやって出来たのが、社会主義、というものでした。少なくともソ連型の中央政府計画型、の社会主義。

 でもこれも前にも述べたかもしれませんが、無理がありますよね。そんなになんでも計画できるわけではありませんし、それに中央政府に権力が集まりすぎて、政治的に圧制になったりする。そんなのより、自由が欲しい、というのが当たり前ですね。

(つづく)


<参考文献>
河野健二編「資料フランス初期社会主義」
by ganpoe | 2009-01-31 12:24 | Social or Economic

http://www.myspace.com/ganpoe


by ganpoe